乗る時がドキドキであれば、降りる時もドキドキであったが、無事新しい地に足を着けることが出来た。 役目を終えたラクダたちは、行儀よく脚を折り畳み、地面に座り込んだ。 それから程なく何か高い音が辺りから聞こえてきた。 なんだろう?と耳をすませてみると、どうも目の前から聞こえてくる。 すると、現地の青年が、これはラクダが鳴いているのだよと教えてくれた。 こんな可愛らしい、というより、切ない声して鳴くなんて・・・。 図体とは似つかわしくない、思わぬギャップにその場に居たもの一同驚いたのだった。 そして、その地に降り立ってから、私の中にはどうにもごまかしきれない気持ちがあった。 正直に言ってしまえば肩を大きく落とすような思いだ。 目の前に広がっている筈のものがそこには無かったのだ。 他の人たちの反応はどうだろう・・・? 周りを見回してみる。 例えば、一目散に"砂丘"を駆け上って記念写真、なんてことをする者は誰一人として居なかった。 そう、想像に描いたような広大な砂丘などそこには無かったのだから・・・。 とはいえ、ここまででも十分過ぎるほど長い道のりだった為、疲労感は満タン。 荷を降ろしほっとすると、一番大きな食堂テントでは、青年たちがミントティーを注いで出迎えてくれた。 爽やかなそのお茶は勢いよく喉元を通っていき、私はすぐにおかわりをした。 そんな疲れきった私たちとは対照的に、テントの中では数匹の仔猫がミャーミャー鳴きながら元気に走り回っていた。 闇に包まれ夕飯の時間になると、テーブルを大勢で囲んだ。 山盛りのパン。 そして、皆でシェアする為の、大きめなタジン鍋が食卓に登場した。 蓋を開けると、野菜が贅沢にゴロゴロっと転がっていて、目にも嬉しい。 何より、蒸し加減が最高で、本当に美味しく頂くことができた。 食事中、一組のカップルの女性が、マラケシュはフナ広場での出来事について、些か憤りを交えて話し始めた。 側では数人の人たちがそれに同意していた。 彼女の話はこうだった。 彼と二人でヘナ描きの女性に絵を施してもらう際、もちろん値段を聞いて頼んだわけだったが、最後の段階になって、通貨はモロッコのディラハムではなくポンドのことを言っていたのだ、ポンドで払え、と迫られたという話。 ポンドとディラハムではえらい違いだ・・・。 やっぱり本当にあるんだ・・・。 フナ広場のヘナ描き女性に関してのそいうった事例は、ネットやガイドブック、いたるところで聞いたことのある話だった。 全ての人がそんな人ではないだろうが、マラケシュで途中から疑心暗鬼になっていた私は、広場を歩く度、描かないか?と手招きしたり呼び止めたりする女性を避けるように歩いていた。 ゆらゆらとした食卓で、彼女の話をぼんやりと聞きながら、また広場で会おう、と約束し別れたマリアのことを思い出していた。 マリアに描いてもらうのが待ち遠しい。 サウジの美しいスカーフを、颯爽と風になびかせていた彼女なら、きっと素敵に描いてくれることだろう。
by filmaniayako
| 2011-11-19 00:46
| travelog
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